
政府のAI基盤「源内」が国産AIを試す。行政サービスと日本語AIは何が変わるか
政府職員向けAI基盤「源内(げんない)」の試用対象として、国産基盤モデル3種が国産クラウド上に立ち上がる。デジタル庁が2026年7月10日に発表した今回の取り組みは、行政の現場で国産AIを実際に比較する初の実証だ。 🏛️ 源内の現在地と今回の発表の意味 源内は、デジタル庁が整備する政府職員向けのAI活用基盤だ。今回の試用も政府職員向けで、一般の人が直接使えるサービスではない。 対話型チャットのほか、文書作成や要約、校正、翻訳といった行政実務を支える機能を提供し、2026年度中に全府省庁の約18万人が生成AIを使える環境にする計画が進んでいる。 今回の発表は、源内で試用する国産基盤モデルを国産クラウド上で動かし、行政の現場職員に実際に使ってもらう実証の開始を伝えるものだ。2026年8月までに「さくらのクラウド」上に実験環境を構築し、9月から11月にかけて複数回の実験を行う予定とされている。 「さくらのクラウド」は令和8年度の政府共通クラウドサービスとして選定された国産クラウドで、デジタル庁はガバメントクラウド上でさくらのクラウドを実利用する初の事例と位置づけている。 🤖 試用する3モデルと国産クラウドの組み合わせ 試用の対象となる国産基盤モデルは3種類だ。NTTデータの「tsuzumi 2(つづみ2)」、富士通の「Takane 32B(タカネ32B)」、Preferred Networksの「PLaMo 2.0 Prime(ぷらも2.0プライム)」が揃う。 これら3モデルはすべてさくらのクラウド上で稼働し、源内のチャット機能を通じてデジタル庁内と複数省庁の職員向けに提供される。 3モデルはいずれも、2026年3月に実施した国内LLM(大規模言語モデル:大量のテキストで学習した汎用的な言語処理モデル)の公募で選定された7件に含まれる。公募では国内での開発・運用、行政実務での実用性、50問の評価テスト、安全性、学習データの法令遵守、ガバメントクラウド上での動作を基準に審査が行われた。 🔬 ブラインドA/Bテストで実務適性を問う 評価方法として採用されているのはA/Bテスト(比較実験)だ。既存モデルと国産基盤モデルの出力をどちらか分からない状態で職員に提示し、好ましいと感じたほうを選ばせる設計になっている。 この比較方法は、今回の発表でいちばん納得できる点だ。国産かどうかを伏せた状態で選ばせるため、モデル名への印象ではなく、職員が実際に受け取った回答の品質を比べられるからだ。 今年度の実証では有用性、信頼性、経済性を検証した上で、来年度以降の調達の在り方を検討するとされている。デジタル庁が挙げる目的には、行政現場からのフィードバックによる国産AIの性能向上、政府調達による安定需要の創出も含まれている。 📋 行政サービスへの影響と読者が確認すべきこと 今回の実証が直接示すのは、政府職員の業務がどう変わるかだ。文書作成、調査、要約、翻訳といった日常業務にAIが入ることで、回答の速さや文書の質が変わる可能性がある。 将来的に窓口の問い合わせ対応や申請書類の確認にAIが関わるようになった場合、使われているモデルがどのクラウドで動き、どのデータで学習されたかは個人情報の取り扱いと直結する。今回の実証では、クラウドと基盤モデルの組み合わせを国産でそろえ、行政データを国内で処理する前提を検証対象に含めている。 実証結果や来年度の調達方針は追って公表される見込みで、源内の利用状況はデジタル庁の「ガバメントAI」ページで継続的に更新されている。国産AIの価値は名前だけでは決まらない。行政の文書作成や問い合わせ対応で、既存モデルと並べても選ばれる回答を出せるかが次の焦点になる。 出典 デジタル庁「ガバメントAI 源内における国産クラウド上での国産基盤モデルの試用開始について」(2026年7月10日) https://www.digital.go.jp/news/7eef939d-1c58-4229-b210-7b5adc9af590 デジタル庁「ガバメントAI 源内」 https://www.digital.go.jp/policies/genai デジタル庁「国内大規模言語モデルの公募結果について」 https://www.digital.go.jp/news/10d55c63-b3e1-42b9-9cc5-93a06943ae0e ITmedia AI+「デジタル庁、tsuzumiなど国産AIを『さくらのクラウド』で稼働 『日本の自律性確保』目指す」(2026年7月10日) https://www.itmedia.co.jp/aiplus/article/2607/10/2000000182/