
Runwayが東京に日本本社を開設。動画生成AIは制作現場から産業インフラへ
広告や映像の仕事に関わっている人なら、ここ1〜2年で「AIで動画を作ってみた」という話を聞く機会が増えたと思います。その波の中心にいる企業の一つが、アメリカ発の動画生成AIサービス「Runway」です。 2026年5月、RunwayはTokyoに日本本社を構えると正式に発表しました。初期投資額は4,000万ドル。1ドル155円換算で約62億円です。 この62億円という数字、海外企業の日本上陸では収まらない規模感があります。なぜ今、この額を日本に投じるのか。そこを理解するには、Runwayが何をしているかを整理するところから始める必要があります。 🎬 動画生成AIとは何か、Runwayは何者か 動画生成AIとは、テキストや画像から短い映像を自動で作り出すAIのことです。「青空の下を走る車」と文字で入力すれば、数秒から数十秒の映像が生成される。手描きのラフ画像を渡せば、それを動かした映像が出てくる。そういう仕組みです。 RunwayはこのAI動画生成の分野で最も早く実用水準に達した企業の一つで、広告代理店や映像制作会社、SNS運用チームが使い始めたのはここ2年ほどのことです。 日本での広がりは数字にも出ています。Runway公式の発表によると、過去12カ月間で日本の企業顧客数は300%増加し、アジア全体の販売量の3分の1を日本が牽引している状態。企業顧客とセルフサービス(個人利用)の両方で、日本はRunwayにとってグローバル第3位の市場になっています。 ヤマハ、ソフトバンク、NHNが公式発表の中で顧客として名前を挙げられています。ソフトバンクの法人マーケティングチームは、Runwayのサービスを一部業務に組み込み、高品質なクリエイティブアセットを作成できる点を社内で評価しているとコメントしています。Runwayはすでに国内大手企業の業務フローに組み込まれている段階に来ています。 🏢 東京オフィス開設が意味すること Runwayが東京に作るのは、プロダクト、エンジニアリング、セールス、カスタマーデプロイメントのチームを持つ本格的な拠点です。採用ページにはすでにTokyoが拠点候補として並んでいて、日本事業責任者の採用も発表されています。 つまり、日本語で質問を受け付けます、という段階ではなく、日本の企業のワークフローにRunwayを組み込んでいく専門チームを東京に置く、という話です。 ちょっと気になるのは、300%増という企業顧客の伸び率です。ベースの数字が小さければ300%でも絶対数は少ないこともあります。ただ、同時にアジア販売量の3分の1を日本が占めているという数字も並んでいて、これは偶然ではありません。企業規模の顧客が実際に使い始めている、という手応えをRunway側が感じているからこそ、この規模の投資が動いたと判断しています。 💡 GWM-1:動画生成の先にある「シミュレーション」 Runwayが今後の方向性として強調しているのが、GWM-1(General World Model)という技術です。 ワールドモデルとは、現実の動きや環境をAI上でシミュレートする考え方のことです。「この部屋でボールを投げたらどう跳ねるか」「この工場ラインでロボットがこの動作をしたら次にどうなるか」を、実際に試さずにAIが再現する。それがワールドモデルのイメージです。 GWM-1はロボティクス、ゲーム、教育、VRなどを用途として挙げています。共同創業者のCristóbal Valenzuela氏は、日本やアジア主要市場がロボティクス・製造業・ゲーム産業で世界をリードしており、ワールドモデルがこの分野で重要な役割を持つと発言しています。 広告の映像をAIで作る道具、というRunwayのイメージだけで見ていると、この発言の意味が見えてきません。製造ラインの動作確認にシミュレーションを使う企業にとっては、「現実の物理挙動を再現できるAI」は完全に別の文脈の話になります。 一方で現在のGen-4.5(最新の動画生成モデル)も、因果関係や物体の持続性にはまだ限界があることをRunway自身が公式に説明しています。動きの一貫性や細かい制御は強化されてきましたが、複雑な物理シミュレーションとして実業務に使えるかどうかは、用途ごとに確認が必要な段階です。 📋 日本の現場に関わりそうな人へ 出典:Runway公式発表をもとにAI Navi JP作成 広告、広報、採用、SNS運用、社内資料の制作に携わっている人には、今の段階でも接点がある話です。 完成動画を丸投げで作る道具、というより、企画案の映像化、複数バリエーションの比較、社内確認用の試作に向いているのが現状のRunwayです。外注する前の「これで伝わるかな」を手元で作れる速さが、広告やマーケティングのチームで評価されている理由でもあります。 デジタルツインや3Dシミュレーションが関わる製造・建設・ゲーム開発の現場については、NEC発の関連技術として3Dポイントクラウドとデジタルツインの動向も整理しています。ワールドモデルとの接続を考えている方は合わせて参照してみてください。 日本拠点ができることで変わりそうなのは、国内企業向けのサポート体制、日本語での事例共有、パートナー連携の速さです。今は公式サイトの情報も英語中心ですが、採用と組織が整ってくれば日本語のリソースや事例も増えていくはずです。ただし、それが実際に整うまでの時間の見通しはまだ見えません。 動画生成AIをどこで使うか迷っている場合は、ソフトバンクのような法人マーケティングチームが「クリエイティブアセットの効率化」という切り口で使い始めているのが、今の段階での現実的な参考になると思います。 参考 Runway公式 — Runway is Coming to Japan(https://runwayml.com/news/runway-is-coming-to-japan) Runway公式 — Introducing Runway Gen-4.5(https://runwayml.com/research/introducing-runway-gen-4.5) Runway公式 — Introducing Runway GWM-1(https://runwayml.com/research/introducing-runway-gwm-1) Runway公式採用ページ(https://runwayml.com/careers) GIGAZINE — 動画生成AIのRunwayが日本に拠点を開設(https://gigazine.net/news/20260515-runway-comes-to-japan/) ITmedia AI+ — 動画生成AIのRunwayが日本本格進出、60億円超を投資(https://www.itmedia.co.jp/aiplus/articles/2605/15/news108.html) Yahoo!ニュース(ASCII)— 動画生成AIのRunwayが日本進出、62億円投資へ(https://news.yahoo.co.jp/articles/cbe1c49f42c5832aaa5c858bd1fee1e96e8e5169) ※当サイトのリンクにはアフィリエイトリンクが含まれる場合があります。 ...