
トヨタファイナンスの問い合わせAI、13分の対応を4分に 人・AI・ロボットで仕事をどう分けるか
月に数千件、Webやメール経由で届く顧客からの問い合わせ。その1件を処理するのに、平均13分かかっていました。トヨタファイナンスが2026年1月から動かし始めた仕組みは、AIエージェントとRPA(ロボット)を組み合わせたもので、今は1件あたり平均4分で動いています。 🗓️ 2025年10月のPoC開始から3ヶ月、本番稼働まで トヨタファイナンスがUiPathのAgent Builder in UiPath Studioを使った試験導入(PoC)を始めたのは、2025年10月です。そこから約3ヶ月、2026年1月には本番環境で稼働を開始しました。 UiPathが2026年5月12日に公式発表した事例によると、対象はWebサイトやメール経由で届く顧客問い合わせです。月に数千件発生していた業務に、AIエージェントが入ることになりました。 全社規模のシステム刷新ではなく、特定業務から試して3ヶ月で本番に持っていった点を、トヨタファイナンス側は評価しています。AI導入を考える側にとっては、いきなり全社展開を目指さず、件数が多く効果を測れる業務から始めた事例として見られます。 🔄 ロボットが情報を集め、AIが文章を作り、人が確認する この仕組みは、3つに分かれた役割で動きます。RPAロボットが既存の顧客情報システムから必要な情報を取り出し、AIエージェントがその情報をもとに回答の下書きを生成します。人間の担当者は内容を確認してから送信する形です。 AIが全部やる構造ではなく、既存システムの操作はロボット、文章生成はAI、最終判断は人間というすみ分けです。この分担が、1件あたりの処理を13分から4分にする結果につながりました。AIに仕事を丸ごと渡す発想ではなく、得意なところだけ任せる発想ですね。 UiPathを選んだ理由として、トヨタファイナンスは市民開発の実現性、自動化機能の充実度、サポート体制の3点を挙げています。トヨタファイナンスは、曖昧な判断をAIへ丸投げしませんでした。 レガシー環境を操作できるロボットとAIエージェントを組み合わせる設計を選びました。業務をロジック化できる点を重視した、というのが公式発表の説明です。 この設計は実務でかなり大切です。古いシステムをすぐ入れ替えられない会社でも、既存環境を残したままAI活用を始める道が見えるからです。 ⚠️ 生成AIだけのPoC、社内基準を超えられなかった 実は最初に試したのは、生成AIだけを使ったPoCです。その結果、「同じ質問に毎回違う回答を生成する」「禁止したはずのことをAIがやってしまう」という課題が出ました。 現場が設定した正解率のしきい値を超えられず、生成AI単独では本番に進めなかったといいます。UiPathのロジックと組み合わせたPoCをやり直したところ、社内基準80%に対して93%の精度を達成し、本番へ移行できました。 公式情報を見ると、生成AIに問い合わせ内容を渡して回答を作らせる段階から、現場の合格基準を安定的に超えるところまで持っていくには、想像以上に設計の手間がかかると感じます。同じ質問への回答がぶれたり、禁止事項を守れなかったりしたため、単独PoCでは社内基準を超えられなかったからです。今回の場合は、ルールを適用するロジックをRPAが担い、曖昧な文章生成の部分だけをAIに任せる分担が、精度の底上げに機能しました。 💼 次は経費精算へ、現場が自分で作れる体制を目指す 今後は経費精算業務への展開も検討されています。UiPath IXP(請求書などの書類から必要な情報を自動で読み取るUiPathの機能)で請求書の情報を自動で読み取り、後続処理をロボットが担う形を検証中です。問い合わせ対応で作った分担を、書類処理にも広げられるかを見ている段階です。 また、情報システム部門だけで進める体制では十分なスピードを出せないという課題も認識されています。将来的には、現場の担当者自身がツールを使って自動化を設計する市民開発の体制が目標として示されています。 従業員約2000人がUiPathを使いこなし、重要な仕事にリソースを向けることを目指す、というコメントも公式事例には収録されています。AI活用はツール導入で終わりではなく、現場が自分たちの業務を言語化できるかまで含めた話になります。 自分の職場でAI導入の話が出た場合は、月に何件の繰り返し処理があるかを見るだけでも、議論が具体的になります。AIに任せる部分と人間が判断する部分を分けると、失敗の種も見えます。 既存システムとのデータ連携も、早めに見ておくと後戻りを減らせます。問い合わせや請求書処理のような反復業務では、今回のようなロボット+AI+人の分担が、現実的な入口になりそうです。 📚 参考 ITmedia エンタープライズ「トヨタファイナンスがAIエージェントを問い合わせ対応業務に導入 「非定型業務」を自動化」(2026-05-14) UiPath「トヨタファイナンス、Agent Builder in UiPath Studio導入で顧客対応業務の生産性を向上」(2026-05-12) UiPath「顧客事例:トヨタファイナンス株式会社」