次に車を選ぶとき、AIがどこまで運転を代わってくれるか。その答えが、また少し先に延びました。カーナビに目的地を入れれば高速でも一般道でも運転操作を支援してくれる機能を、ホンダは2027年頃に量産車へ載せる計画でした。2026年4月25日、日本経済新聞がその時期を2028年へ延期すると報じました。

ホンダAI運転支援の2028年延期を解説する図

延期の理由は、技術的な問題ではありません。搭載を予定していた車種が、EV戦略の見直しで白紙になった。それが直接の原因です。

延期されたのは運転支援の技術

今回の対象は「ナビゲート・オン・オートパイロット(NOA)」という運転支援システムです。ADAS(運転支援システム)の一種で、目的地を設定すると高速道路から一般道まで運転操作の多くをクルマが代わりに行います。

ただし「完全自動運転」とは別物です。ドライバーが乗らなくていい自動運転ではなく、あくまで人が乗った状態でアクセル・ブレーキ・ハンドル操作を支援する技術です。長距離の高速移動や渋滞の多い都市部では運転の負担がかなり減ります。一方で現時点では、緊急時の判断はドライバーが担う前提です。つまり、購入時には「運転を任せる機能」ではなく「疲れを減らす補助」として見るのが現実に近いです。

ホンダ次世代ADAS開発の経緯とスケジュール変更

ホンダは2025年5月の公式説明で、この次世代ADASを2027年頃に北米と日本で投入予定のEV・ハイブリッド車の主力ラインアップへ幅広く適用すると発表していました。同年10月には米国公道でのテスト走行が順調と説明し、ハイブリッド車への展開も明言。2027年目標を2度にわたって確認していました。

EV計画の白紙化がAI搭載時期を動かした理由

今回はっきり見えたのは、技術の進捗と事業計画がまったく別のリズムで動いているという点です。

ホンダは2025年10月、米国のAI企業Helm.aiへの追加出資を発表しました。Helm.aiはEnd-to-EndのAIアーキテクチャーで運転支援を開発する会社です。これは、カメラやセンサーの入力から加速・操舵の出力までを一つのAI設計で扱う方式を指します。Deep Teachingは、少量の教師データから多様な走行場面を学ばせるHelm.ai独自の手法です。ホンダはこれらの技術と生成AIを組み合わせ、一般道・高速道路を問わず全ルートで支援する次世代ADASを共同開発しています。この投資は延期後も継続中です。

それと同時期、ホンダは四輪電動化の戦略を見直していました。EV市場の拡大スピードが想定を下回り、2030年時点のEV販売比率は従来目標の30%を下回る見通しになったと公式に説明しています。NOAを載せる予定だった車種がそのEV見直しの影響で計画から外れ、搭載時期がずれた形です。

AI技術への投資は続けながら、「どの車に載せるか」という側が先に崩れた。AIが搭載された車が市場に出るには、技術の完成だけでなく、搭載する車種の量産計画と販売戦略がセットで必要だということを、今回の延期は具体的な形で示しています。

次の車を選ぶ人に関係すること

車を近々買い替える予定がある人、あるいは高齢の家族の運転を気にしている人には直接関係する話です。

2027年頃に使えると思っていた機能が2028年以降にずれた。競合他社、たとえばトヨタやBMW、テスラも同様の運転支援機能を展開中ですが、どのメーカーがいつ日本市場で量産車に載せてくるかは、購入を考えるうえで確認が必要です。

ホンダの次世代ADASについては、2028年が現時点の目安です。搭載車種の詳細はまだ公表されていません。2028年を待つか、他社の支援機能を含めて今買うか。車選びの比較軸は、価格や燃費に加えて「どんな支援機能がいつ載るか」まで広がってきました。


  • 日本経済新聞 - ホンダがAI自動運転も延期 EV見直し余波で28年に、競合に後れ(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC087D00Y6A400C2000000/)
  • Honda - 2025 ビジネスアップデート 説明概要(https://global.honda/jp/news/2025/c250520.html)
  • Honda - 次世代AD・ADASの開発強化に向け、米国Helm.ai社に追加出資(https://global.honda/jp/news/2025/c251015a.html)
  • Honda - Japan Mobility Show 2025 取締役 代表執行役社長 三部 敏宏 スピーチ概要(https://global.honda/jp/news/2025/c251029.html)